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基本はBtoB、分かりやすさも大切だが優位性のアピールの方が効果的
「製造業のパンフレット」の具体的な紙面を考える前に、まずは「そもそも製造業のパンフレットはだれをターゲットにしているか」について考えていきましょう。
現在は個人からの発注を受ける製造業(工場)も増えていて、「自分の趣味や理想をかたちにするためにプロに依頼する」という人も増えています。ただ、増えているといっても、それは製造業全体の受注業務量からすればごく小さなものです。また個人からの発注は、一部の例外はあるものの、単価は高くてもまとめた数字でみればそれほど大きな売り上げにはなりません。
もちろん個人からの受注であっても決してないがしろにはできませんが、このような特徴があるため、製造業は基本的にはBtoBであるといえます。そのため、パンフレットも主に企業をターゲットとして展開します。
BtoBの業界のパンフレットの場合、BtoCのパンフレットとは大きく違う点があります。それが、「BtoBのパンフレットの場合は、読む人に専門的な知識があり、また『読もうとしてくれる』」ということです。
BtoBのパンフレットを手に取るお客様は、自身もその業界に関する相応の知識があります。そのため、BtoCならば求められる用語の説明を省いてもある程度話が通じますし、より専門的な解説も可能です。
またBtoBの場合は会社ごと・企業ごとでの取引となるうえ、動く金額も大きいので、パンフレットを読む人は「この取引先(製造業)はどんな特徴を持っているか」「どんな取引が可能か」を知るために、じっくりと時間をかけて読んでくれます。
BtoCのパンフレットの場合にもっとも優先されるべきは、「分かりやすさ」「読みやすさ」です。BtoCの場合は、お客様と成り得る可能性のある読者は、「面倒」「理解に時間がかかりそう」と感じたらすぐに離れて、ほかの同業他社の商品に目を向ける可能性が高いといえます。
しかし製造業の場合はそうではありません。もちろん分かりやすさは重要ではあるのですが、それ以上に、「競合他社とどのような違いがあるか」「自社の商品には、(ほかの企業とは異なる)どんな強みがあるのか」「工期や費用はどれくらいかかるのか」「どんな製品が作れるのか」などの表記が重要となります。
特に「競合他社との違い」は重要性が高いものです。複数社が候補に挙がっている場合、決定権を持つ担当者は、その候補のなかからより良い条件のものを選ぼうとするからです。
なお、同業他社との比較の文章を載せる際は、景表法(「不当景品類及び不当表示防止法」、「景品表示法」。以下では『景表法』の表記に統一する)には注意しましょう。自社の商品やサービスを実際よりも著しく良く見せようとした表記をしたり、根拠がないのに「最大」「No.1」などの表現をしたりした場合は、消費庁長官から措置命令が下されることになります。
製造業のパンフレットに盛り込むべきこと
製造業のパンフレットのターゲットを知ったところで、ここからは、「では製造業のパンフレットにはどのようなことを盛り込むべきか」について解説していきます。
製造業のパンフレットに盛り込むべき要素は、以下の通りです。
- 1.製品の紹介
- 2.強みの話をする
- 3.信頼性のアピールは欠かせない
- 4.会社案内と代表者挨拶
1つずつ見ていきましょう。
1.製品の紹介
製造業のパンフレットにおいてもっとも重要なのは、やはり「自社製品の説明」でしょう。自社がどのような製品を打ち出しているのか、どのような製品の加工ができるのか……などを説明していきます。
ただ、注意してほしい点が1つあります。
それが、「パンフレットは、予想以上に文字が入らない」という点です。A4サイズのパンフレットには1000文字程度が入るのですが、製品比較に役立つ写真を多く入れるなどした場合、入れられる文字数はもっと少なくなります。
製造業のパンフレットを読む人は、前述したとおり、「すでにある程度知識のある人」「読んでくれる人」です。そのため用語に対する補足的な説明は省けますし、ある程度文字が詰まっていても読もうとしてくれます。
しかしそれでもすべての製品の詳細な説明を盛り込むことは難しいと思われるため、特に売り出したいものを中心としてパンフレットを構成するとよいでしょう。また、一目で自社製品の違いが分かる比較表などを上手に入れると、文字数の制限と詳細な説明を両立させることができる場合もあります。
2.強みの話をする
同業他社との競争に勝つためには、「自社製品・自社の強み」を打ち出すことが欠かせません。この「自社製品・自社の強み」は各社異なりますが、
- ・品揃えの良さ
- ・製品の頑丈さ
- ・自社の技術力
などがその代表例でしょう。
なおこれらの強みを打ち出す際は、単純に「〇〇が強みです」「〇〇に自信があります」などのように表記するのではなく、「業界No.1(※前述したように景表法の制限があるので、客観的に証明できる場合のみ)」「気温〇度~〇度まで耐えられます」「創業100年、確かな技術力」などのように、具体的な数字を入れるようにします。数字は人の目を引きますし、クライアント様にとってどのような利益があるのかを示す指標ともなります。
3.信頼性のアピールは欠かせない
製造業において、「信頼性」は非常に重要な要素です。
該当分野の資格者が社内にいるのであれば、その旨を記載しましょう。特に国家資格を持っている人間が複数いる場合は、資格の名前とともに記載します。
有資格社員の顔写真は必須ではありません。ただ、「国家資格取得者〇人以上在籍」「直接やりとりする担当者は、すべて国家資格を保持しています」などのように打ち出せれば、訴求力はより高くなります。
また、国家資格の保持者の記載同様、クライアント様にとって安心材料となるものがあります。それが、各種の認証・許可などです。JISマーク(日本産業標準調査会。国によって登録された第三者機関が審査を行い、それの認証を受けた者が掲げることのできるマーク)はその代表例だといえるでしょう。
なお、このような認証・許可は、単純に「●●許可取得済み」などと書いても問題はありませんが、具体的な番号などを記すようにするとさらに良いでしょう。場合によっては、クライアント様が「本当に認証・許可を得ているのか」と調べることもあるでしょうし、番号を書いておくことでより信頼性も高まります。
4.会社案内と代表者挨拶
すでに述べた通り、パンフレットはかなり文字数制限が厳しいものです。また、紹介するものが多く、紙面が圧迫される……というケースも多いかと思われます。
ただそれでも、可能な限り、「会社案内」と「代表者挨拶」は入れておいた方がよいでしょう。
会社案内を分かりやすく提示することで、クライアント様は「ここは信頼がおけそうだ」「〇年の歴史があるのならば安心だろう」「地場での対応に強い企業だ」などのように判断することができます。また、このパンフレットを手掛かりとして、さらに自社のことを調べてくれるかもしれません。
製造業は、「それを使う人」と直接顔を合わせることは少ない業界です。そのためともすれば、「どんな人が、どんな理念で、どんな風に仕事をしているか」をクライアント様が見失ってしまいがちです。
このような状況に陥ることを避けるために、「代表者挨拶」のページを設けておきましょう。1ページを確保するのが難しい場合は、代表者挨拶を上側に、会社案内を下側に配置する、というやり方をとれば問題ありません。
代表者挨拶は、代表者がクライアント様(またそこから繋がる一般ユーザー)に向けて、言葉を伝えるページです。特段の事情がない限りは、自分自身の言葉でとりまとめるようにしてください。
取り扱う分野によってデザインテーマは異なる
最後に、「製造業のパンフレットのデザインテーマと写真」について見ていきましょう。
基本的には、製造業は「硬質」「信頼」「強さ」を打ち出すことになります。鉄やアルミ、プラスチックなどの素材と相性がよく、機械の写真を大きく打ち出す会社も多く見られます。また、実際に物が製造されている工場内の写真や、パイプなどを使用した連結部などをアップで収めることもよくあります。
上では「国家資格取得者の顔写真までを掲載する必要はない」としましたが、信頼感の向上を求めて、制服姿(作業着姿)の社員の写真も一緒に掲載している企業も多く見られます。なお製造業の場合は制服(作業服)がどうしても汚れてしまうことがありますが、写真に収める場合は、清潔で汚れのない制服(作業服)の方が受けがよいでしょう。なお製造業の男女比率はおおむね3:2ですが、男性社員の写真だけでなく、女性社員の写真を使ってみるのも良いかもしれません。
製造業のパンフレットは、硬質で真面目な印象の写真で構成するのが基本ですし、文章もそれにならいます。ただ、製造業はひとつではありません。なかにはファッション・アパレルに関わる物を製造している企業もあることでしょう。このような企業の場合は、パンフレットにも、「華やかさ」「きれいさ」「賑やかな雰囲気」「高級感」などを入れ込むとよいでしょう。ファッション・アパレル業界のクライアント様に関心を持ってもらうために、「ここに頼んだらセンスの良いものをきちんと作ってくれそうだ」「きれいな仕上がりになりそうだ」と感じられるようなパンフレットを作るべきなのです。そのため、同じBtoBの製造業であっても、載せる写真や文章は、大きく変わってくるといえます。
日本にとって、「製造業」は非常に重要なものです。いわゆる「カスタマー」は、自分の手にある「製造物」を見ても、それを作った製造業にまで思いをいたらせることは決して多くはありません。個人からの注文を受ける企業もありますが、そのターゲットは基本的には「会社組織」になるでしょう。
そのような会社組織に選ばれるためには、「自社製品の展開」「自社製品や自社の強み」「自社が信頼するに値する企業であること」「会社案内と代表者挨拶」をしっかり練りこむ必要があります。
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